アイガー北壁
映画「アイガー北壁」です。
こういう欧州の山岳映画は久々ですね。
アイガー北壁の初登攀を讃える映画ではありません。欧州アルプスの登攀に関心のある人にとっては非常に有名な事件の映画化です。
アイガー北壁初登攀は1938年になされるのですが、それに先立ってドイツのクライマー達が36年に挑んだ初登攀の企てに関する映画です。ヒトラーが国民の士気を鼓舞するために「この北壁を初登攀した者にベルリン五輪の金メダルを授与する」と煽り、血気盛んな独襖クライマー達が挑んだ結果遭難したという実話を映画にした物です。(38年の初登攀もドイツ、オーストリアのパーティが成し遂げました。)若者達の閉塞的な状況と山岳登攀の隠喩的な意味を利用したナチスの企み、と監督は言います。
個々のクライマーの人となりが映画で描かれている通りだったのかどうかは私は知りません。
優秀なクライマーだった事は事実だっただろうと思います。難しい壁のトラバースをリードしたヒンターシュトイサーの技術など、初登攀者の一人であるハイニ・ハラーも初登攀記「白い蜘蛛」で賞賛をしています。
(そういえばクリント・イーストウッドの「アイガーサンクション」でも、イーストウッドが振り子トラバースをやっているシーンがありましたね。)
この映画、ナチス批判の映画という事になっています。ドイツにとってこういったナチスの傷跡は何らかの形で総括したいという事なんでしょうね。同様の事象が日本でもありますかね?判りませんね。
映像はCG処理で実写とスタジオワークを組み合わせた映像となっているそうです。普通の俳優さんが演じているのだから当然です。
やっぱり個人的には単純にクライミングのすばらしさを見せてくれる映画が良いですね。ロータール・ブランドラーやレビュファが撮ったようなものが。
が、本作は批判的視点から描いたドラマですからそうは行かない。
怪我をした仲間を連れて吹雪の中を下降するシーンは見ていて辛いものがありました。
でも、クライマーは辛抱強く一歩一歩進むもので、絶対諦めないものです。常に冷静で、やけっぱちになど絶対にならないのがクライマーです。トニー・クルツの行動などその通りですよね。助かって欲しいと思いながらも、この悲劇の結末は知っているのでとてもじゃないけどやりきれない気持ちで見ました。
この映画でも自分のザイルを切って墜落していく自己犠牲のシーンがありましたね。娯楽山岳映画 "Vertical Limit" でもありました。欧米の山岳映画ってみんなこうなの?って思ってしまいますね。ヒンターシュトイサーもそうだったんだろうか、「白い蜘蛛」を読み直してみよう。
ちなみに初登攀(1938)の成功もまだナチスのポーランド侵攻前でした。4人のクライマー達の内一人は上記ハインリヒ・ハラーで、開戦時ヒマラヤ遠征中でイギリス軍の捕虜となったが脱走しチベットでダライラマ14世の家庭教師となったのは有名な話です。「チベットの7年間」ですね。ブラッド・ピット主演の同名の映画は中途半端なほとんど駄作で、原作が泣くぜと思いました。彼は戦後その手記を発表し、またアイガーの記録「白い蜘蛛」も上梓したんですね。他のメンバーのうち一人は戦死、パーティをリードしたアンデルル・ヘックマイアーは戦後も山岳ガイドをしていて、ガストン・レビュファのガイド本に写真が掲載されているのを見た事があります。
アイガー北壁には日本のJECCというクラブが開いたJapan Directと呼ばれる直登ルートがあります。ピークから一直線に垂線を引いてその通りに登るという、一見乱暴な、だけれどもその当時の流行の登攀スタイルでやり遂げたんですね。でもクラシックな初登ルートよりも安全性は高かったかもしれません。雪崩の通り道になるルンゼや雪田を横目で見て真っ直ぐ登っていく訳ですからね。
そういえば、アイガーと並ぶアルプス3大北壁の一つ「グランドジョラス」の北壁を初登攀(1938年)したイタリア人リカルド・カシンが昨年亡くなったという報がありました。なんと御年100歳の大往生。ともあれ初登攀を成し遂げた人たちには畏敬の念を禁じ得ません。


Comments
山登りはしませんが、山岳小説や映画は大好きです。この映画も見たいな~と思っているんですが、埼玉では上映が無いんですね。
剣岳はDVDになったので見てみようかなと思ってます。
Posted by: くっしー | April 14, 2010 at 02:40 AM
ども、クッシーさん。
横浜でもこの映画は桜木町に最近できたシネコン1館だけでの上映です。あんなに雨後の筍のごとく一杯シネコンを造っておいて何ですかね。あんなに映画館があるんだからマイナーなB級映画や音楽映画もかければ良いのにと思ってしまいますね。
Posted by: KC | April 14, 2010 at 04:51 AM